戸田市の貧困ビジネスについて

議員活動のため戸田市内をくまなく回っていると、汚い寮のような、異様な施設に出くわすことがあります。調べてみると、この施設は「無料低額宿泊所」といい、ホームレスを収容する民間の施設であることが分かりました。
戸田市はこの「無料低額宿泊所」が特に多く、400人以上ものホームレスの方を収容しており、わが市の福祉予算が大きく費やされています。
これらの施設は「無料低額」と言っても、実際は無料でも低額でもありません。生活保護として給付される十数万円ぎりぎりの費用を徴収しています。
また、住環境も悪く、ある施設では8畳の広さの1部屋を、ベニヤ板で3つに仕切って使っているとのことです。これは埼玉県の施設基準に反しています。
※ 埼玉県の施設基準では、「居室使用料は、無料または低額なものとすること」、また「1つの居室は、原則として2以上の世帯に利用させないこと」「1人あたり居室面積4.5m2を最低基準とすること」「居室の出入り口は硬質な扉とする」などの規定があります。
今から8年前の戸田市議会の議事録に、これらの施設について述べた「よくあんなところに住めるな」という当時の議員の発言が記録されています。
状況は今も変わりなく、失業し住居を失った、傷ついた男たちの行きつく先がこれかと、同情を禁じえません。
違法状態で経営されているのが常態化している他、これまでに多くの問題が新聞紙上で指摘されてきました。戸田市の貧困ビジネスについて、ここ数年だけで次のような問題が取り上げられています。
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2009年3月「生活保護費ピンハネ?元派遣男性を半月“軟禁”」(生活保護費の強制徴収やそれを実行するための施設利用者の軟禁、預金通帳の管理)産経新聞
2009年9月「大手事業者、保護費2.5憶円が使途不明、自治体に説明拒否」毎日新聞
2010年7月「低額宿泊所:脱税、運営者有罪」毎日新聞
2011年5月「好条件並べ勧誘、貧困ビジネス提訴」朝日新聞他
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虚偽の求人により勧誘を行い生活保護費をだまし取るという手口の詐欺行為、運営者の脱税や不明朗な会計処理による利益処分、生活保護費の強制徴収やそれを実行するための施設利用者の軟禁、預金通帳の管理、などなど(!!!)。一昔前に流行語になった「疑惑の総合商社」という言葉が思い出されます。
これだけの問題が噴出していながら、国・県・市のいずれの動きも乏しいのが現状です。
この問題を調査して見えてきたのは、国・県・市の3者による責任押し付け合いの姿です。口々に、「問題は無い」、「うちの管轄ではない」…面倒な問題には関わり合いになりたくない、という雰囲気をひしひしと感じました。
こうした押し付け合いで不利益をこうむるのは、福祉予算を負担している納税者と、自立支援を受けるべきホームレスの方たちです。
私は本問題について、これまでも委員会や非公式なヒアリングなどで要望を行ってきましたが、改善される兆しはありませんでした。そこで、議会において本件につき問題として提起。
市の問題として、現状把握の甘さがあります。例えば「市外から何人のホームレスが流入して(業者に連れて来られて)いるのか」すら調査していないのが現状です。
まずはデータを整理し、国や県に対して強力に、制度改正や協働の働きかけをしつつ、ある程度の負担増を市でも覚悟して自立支援の改善を行うのが道筋であるとし、要望を行いました。
本件は、市当局との間で見解の相違が多々見られたものの、最終的には「取り組んでいく」との答弁がありました。
今後は、市当局の取り組みを確認しつつ、県会議員との連携により県への働きかけを強めたいと考えています。