ある架空の戸田市民の話です。
「高度成長を支え、大した趣味もなく一生懸命働いてきた、団塊前後の熟年男性。一人暮らし。一人暮らしの男性は生活習慣病にかかる率が非常に高いが、この男性も病気を抱える。生活に不自由はないが生きがいもなく、自殺を試みるが、未遂に終わる。一命は取り留めるも、近所に本気で心配してくれる人も無く、行政のフォローもなく、何度か自殺未遂を繰り返すうち、ついに思いを遂げて死亡」。
これが、内閣府から発表されたデータから割り出した、戸田市の自殺者の平均像です。
なんという悲惨な、人生の最後ではないでしょうか。
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データからは、戸田市の自殺者バックグラウンドが、他市町村と比べて非常に特徴的であることがうかがえます。
まず1点目として、自殺者の年代の部分で、50~70歳の、団塊前後の世代の割合が非常に多い。自殺者全体に占める割合は、全国平均で男性の50代が20%、60代が19%ですが、戸田市においてはそれぞれ30%、26%となっています。
原因として考えられるのは、戸田市の自殺対策の遅れです。先進自治体では、自殺者の多い中高年の男性にターゲットを絞った対策を行い効果を上げる一方、戸田市ではほとんど手つかずに放置されているためであると考えられます。
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2点目として、独居者が多いこと。
全国平均27%に対して戸田市34%。過去最多の自殺者を記録した平成22年は47%でしたから、全自殺者のほぼ半分が独居者。全国平均の2倍近い割合でした。
3点目として、自殺の動機の大半が健康問題であること。
全国平均38%に対し、戸田市55%。
独居老人の自殺者が多いため、健康問題を苦にしての自殺が多くなったのだと考えられます。独居老人問題への取り組みの遅れが原因と考えられます。
4点目として、過去に自殺を試みた方、つまり自殺未遂者の割合が高いこと。
全国平均19%に対し、戸田市31%。
当然ながら、自殺未遂者は最重要の自殺予備軍です。
彼らへのまとまった対処がなされていれば、これだけ大きな値にはならなかったことでしょう。
私は今回新たに発表されたデータを分析して愕然とするとともに、ある意味予想通りの結果がでたと感じました。
データを分析すればするほど、そこから浮かび上がってきたのは、戸田市における自殺対策の遅れだったからです。
その結果として、平成21年以降、3年連続で30人以上、3年間で合計100人の戸田市民が自殺で亡くなりました。